私をその中に取り込む事で彼はアンドロギュノスになりたかったのではないか。まるで完全であると見紛う程の外見的美しさを誇る彼でさえ、人間という不完全体であるが故に憎むべき悪をその中に宿しているのだから。アンドロギュノスになることで完全体になり彼は心の安息を得たかったのではないだろうか。悪であるが故に生まれるその美しさを捨ててでも。彼の暴走は神になりたがる者の末路か。隠した秘密の代償か。
彼はあまりにも美しく常に不可思議をまとっていた。いつもどこかの学校の制服の様な服をきていて、颯爽とかけてゆく姿が美しかった。その夢の中では僕は紛れもなく彼の事が好きだったんだと思う。だから彼について詮索しなかった。其れ故、彼が何者であるかは未だ謎の儘だ。
夢の中ではいつも同じ事を繰り返していた。正しくいうと少し違うのだけどほとんど変わる事はなかった。それがある時突然彼は豹変してしまった。僕が彼の秘密を、彼が隠し続けた秘密を知ってしまったと思って。もちろん、僕は何も知らなかった。今だって知らない。
最近になって突然浮かんだ。彼はマルドロールだ。正しくは違うけれど僕が出会ったすべての人の中で一番マルドロールに似ているのは彼だ。
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